読書日記 1-1:宇宙を解く唯一の科学 熱力学

こんにちは。本日はポール・セン著、水谷淳訳の「宇宙を解く唯一の科学 熱力学」についての感想を述べたいと思います。

 

この本、最初に書店で見たときはあまりにタイトルが大げさだったので、見向きもしなかったんですよね。"宇宙を解く唯一の科学"って冷静に考えて科学を多少でもかじった人間にとっては片腹痛い表現じゃないですか。

 

ただ実際読んでみてそんな印象は消えました。今年に入ってから読んだ本の中では多分一番面白かったってレベルで気に入っています。どれくらいかというと熱力学勉強した人なら絶対に一回は読んどけってレベルで気に入っています。というわけで熱力学に興味があったら是非読みましょう。総評は以上です。

 

では、早速内容の話に入っていきます。

 

この本ではまず熱力学の開拓史に触れて、そこから統計物理学の発展を経て、現代物理学において一層の広がりを見せる熱力学の世界について物語られます。そこで、

1)熱力学前史

2)統計物理学の発展

3)現代における熱力学の広がり

の3つに分けてそれぞれ話していきます。

 

1)熱力学前史

熱力学前史と言ってもここで、大学の教養でやるような熱力学はすべて収まります。すなわち、第二法則の発見と第一法則と第二法則を後ろ盾にした理論としての熱力学の完成です。実は熱力学はマクスウェルやアインシュタインといった物理学史における最重要人物に数えられる方々にこぞって気に入られた分野でした。それは何といっても、熱力学の堅強でありながら素朴な理論とエントロピーというあまりにも特異な物理量の存在によるものでしょう。

 

この本ではその熱力学の最大の成果となったエントロピーの概念について、その発見の仮定をカルノー→トムソン(ケルヴィン卿)→クラウジウスの順に追っていきます。これらの名前は熱力学の教科書には当然のように出てくる名前ですが、この本では歴史を語る以上彼らの人生を追ってくれるわけです。これは熱力学の教科書には載っていないことでしょう。歴史好きの私個人にとって特にびっくりしたのは、カルノーの父親ラザール・カルノーフランス革命時代の統領政府の一角を担っていた時期があったということです。実はカルノー家は多くのすぐれた人物を輩出しているようで、カルノーがその天才によって熱力学の最初の一歩を踏み出した以外にも、政治家や化学者、中にはフランスの大統領になる人物も現れたようです。

 

ほかにもトムソンやクラウジウスの人柄が分かり、とても勉強になりました。科学とて人間が創るものである以上作り手のことについて知ることはとても重要なように思いますね。

 

では、疲れてきたので2)と3)はまた次に回します。おやすみなさい。